TOPへ

肩の痛み

 

肩の痛みとは

日常的な動作のほとんどは肩が関与しており、肩に痛みがあると様々な場面で頻繁に症状を起こすことになり、生活に支障を及ぼします。また、就寝中にも無意識に身動きをしていますので、いきなり強い痛みに襲われて目覚めてしまい、上質な睡眠がとれずに日中の集中力や注意力を下げてしまうこともあります。
肩の痛みは、肩こりや同じ姿勢をとり続けた疲労の蓄積によって生じることもありますが、スポーツやダンスなどの際に生じることも少なくありません。どういった動きの際に痛むのか、痛む場所、痛みの程度と範囲、頻度などをしっかり把握した上で必要な検査を行い、整形外科専門医が正確に診断した上で適切な治療を行います。症状が軽い段階で受診することで、つらい症状まで進ませずに治せる可能性が高くなります。悪化する前に気軽にご相談ください。

肩の構造

腕の上腕骨の肩に近い先端は上腕骨骨頭と呼ばれ、ボールのような丸い形状をしています。肩甲骨には皿のような関節窩があって上腕骨のボール状骨頭を受け、関節窩に上腕骨骨頭が擦れるような動きによって肩の大きな可動域と腕の自在な動きが可能になっています。
腕を動かす際には腱板などのインナーマッスルが収縮し、それによって関節窩に上腕骨骨頭が近づいて肩関節のスムーズな動きを実現しますが、肩関節周辺の骨や筋肉に変形やズレなどが生じると肩の動きに支障が起こり、痛みや可動域制限などの症状を起こします。可動域が制限されてしまうと腕を自在に動かせなくなり、日常的な多くの動作ができなくなることがあります。

主な症状

腕を動かすなど肩関節を使った動作によって痛みを起こします。安静時に痛みが生じることもあります。痛みが慢性化すると痛みを起こす動作を無意識に制限してしまい、肩周辺の筋肉や関節がかたくなって肩関節の動きが制限される拘縮を起こし、日常的な様々な動作ができなくなります。

肩の異常を起こす主な原因

外傷

転倒などの事故やスポーツなどで受けた肩の怪我や脱臼などです。肩自体の打撲には、骨折・骨挫傷、腱板損傷、肩関節脱臼、肩鎖関節脱臼など、様々なケースがあります。また、肩自体に直接打撲などの衝撃を受けていなくても、転倒で手を突いてしまい、上腕骨に突き上げられて腱板損傷や断裂を起こすこともあります。

加齢による変性

加齢によって骨の変形や筋肉と骨を結合している腱板に異常が現れて、肩関節周囲の組織に損傷を与え、痛みなどの症状を起こします。腱板変性断裂の場合、長年のダメージが蓄積して腱板が少しずつ擦り切れ、毛羽立つようなダメージを受けて発症します。

慢性的な炎症

肩関節の炎症の代表的な疾患に肩関節周囲炎があります。肩関節の痛みと動きの低下を起こし、「四十肩」「五十肩」と呼ばれています。原因を明らかにせずに痛み止めなどの処方や肩峰下滑液包・肩甲上腕関節への注射などの治療が行われることが多くなっていますが、当院では、肩だけでなく、その周囲の可動域やかたさ、関節の動き方、体幹や下半身なども含めた全体のバランスや機能を丁寧にチェックしています。痛みや炎症を解消するための薬物療法、理学療法士によるリハビリテーションを行います。

肩の痛みを起こす主な疾患

脱臼

肩関節は、ボール状の上腕骨の先端が皿状の肩甲骨関節窩にはまっており、擦れるように動くことで自在に腕を動かしています。この構造によって大きな可動域をもたらしますが、強い力がかかるとゆるみや外れを起こしやすい傾向があります。こうしたことから、肩の脱臼は無理な動きや転倒の際に手を突くなどによって生じることがあります。脱臼では、筋肉や靱帯、関節包など周囲の組織に損傷が及びやすくなっています。正しい位置へ速やかに戻す整復を行い、必要な期間安静に過ごしてから、適切なリハビリテーションを行うことで、より早い回復と再発防止につながります。ベッドでうつ伏せになり、手をベッドの外に垂らして重錘を装着することで筋肉がゆるみ、自然に整復されます。この方法であれば、痛みもほとんどなく、周囲へのダメージも最小限に抑えられます。また、リハビリテーションでは、インナーマッスルを含めバランスを重視した筋力の回復に加え、上腕骨と肩甲骨関節窩の求心位改善を行います。なお、繰り返し脱臼を起こしている場合には手術を検討します。

石灰沈着性腱板炎

肩関節内に石灰(リン酸カルシウム結晶)が沈着して肩関節周囲炎のような症状を起こしますが、沈着が急速に進行して激しい痛みを生じるという特徴があります。中高年の方が発症しやすい疾患です。安静を保ち、痛みを緩和させるための薬物療法など、状態に合わせた治療を行います。

急性期

痛みの症状が起きてから2~3週間は強い炎症が治まらず、安静時や夜間にも激しい痛みが続き、その間は肩を動かすことも難しくなります。安静と適切な治療を受けることで症状をできるだけ落ち着かせ、慢性期の症状を大きく緩和できます。

慢性期

急性期の痛みは緩和しますが、肩を動かせなかった期間が長く、筋肉や靱帯がかたくなることで新たな痛みを起こし、腕の動きが制限されてしまいます。そのまま放置していると関節周囲の組織が拘縮して可動域が大幅に狭くなる凍結肩になってしまい、治療をしても回復が困難になってしまうケースがあります。急性期から治療をスタートし、慢性期にもしっかり治療やリハビリテーションに取り組んで状態を改善させましょう。

肩関節周囲炎(四十肩/五十肩)

肩関節周囲炎は、肩の整形外科疾患で最も発症頻度が高くなっています。一般的には「四十肩」「五十肩」と呼ばれていますが、実際には肩以外の様々な部位の影響が大きく関与して症状を起こしているケースも多く、肩のみの治療や調整だけでは十分な治療効果を得られず、再発を繰り返すこともあります。当院では、肩関節周辺の可動域、かたさ、動きの異常や特徴、体幹や下半身の状態、全体のバランスなどを丁寧に確認し、全体を視野に入れた治療や調整をしっかり行うことで、より早い治癒や再発防止につなげています。薬物療法やリハビリテーションなどで動きや状態を確認しながら行うことで難治例にも対応できるようにしています。

腱板損傷/腱板断裂

加齢による肩周囲筋の衰えや硬化があり、過度な負荷がかかると骨と筋肉をつなぐ腱板が摩耗してダメージを受け、腱板変性断裂を起こします。スポーツや事故による怪我などで腱板損傷や断裂を起こすこともありますが、加齢による腱板変性断裂とは治療やリハビリテーションの内容が大きく変わります。なお、スポーツなどによる腱板損傷や断裂では急激に痛みを生じて肩の動きが制限されるという特徴があります。
軽度の損傷では、痛みを緩和する治療とリハビリテーションである程度の回復が可能ですが、損傷が重度の場合や、治療をしても症状の十分な改善が得られない場合には手術を検討します。

肩こり

重い頭部を支えて動かす首の筋肉、腕を動かす筋肉への過度な負担、炎症などが関与して肩こりを起こします。休息や睡眠、ストレッチやマッサージで改善できる場合もありますが、強い肩こりに頭痛やめまいなどの症状を伴うこともあります。また心筋梗塞の症状として胸の痛みではなく、強い肩こりを起こすこともまれにあります。

野球肩

投球動作に伴う肩の痛みは年齢に関わらず起こることがありますが、成長期と成人では必要な治療やリハビリテーションの内容が大きく異なります。お子さまの場合、オーバーユースによって骨端線が開く上腕骨近位骨端線離開(リトルリーグ肩)を発症することがあります。成長への影響を考慮しながらしっかり治すことが重要です。野球肩では、投球動作のタイミングで、どの部位に、どんな痛みが起こるかといった症状の内容にも個人差があります。さらに、投球動作では、下半身から体幹、肩、上肢が一連の流れとしての運動連鎖を起こしていますので、肩だけではなく、下半身や体幹の柔軟性や可動域、全身のバランスに根本的な原因が隠れていることもあり、全身のコンディショニングが重要になります。

インピンジメント症候群に
注意を

インピンジメント症候群は肩を激しく動かす運動を繰り返すことで関節内の骨同士や骨と軟骨・靱帯の衝突や骨の間の筋肉が挟まってしまい、周囲の組織を損傷している状態です。腕を前に振る動作を繰り返す野球をはじめ、バレーボール、テニス・バドミントンで生じやすいので、こうしたスポーツをしていて強い肩の痛みが現れたら速やかに当院までご相談ください。
特に骨の成長が未熟な成長期の場合、インピンジメント症候群を発症すると周囲の軟部組織に重大な損傷を及ぼして成長を妨げる可能性があります。できるだけ早く受診し、適切な治療やリハビリテーションを早期に受けることが重要です。

診断

X線検査

骨の変形の有無や状態を精密に見極めます。動作の際の衝突の有無や過剰な負担がかかる構造ではないかを丁寧に確認します。

超音波(エコー)検査

X線検査ではうつらない腱板や筋肉など軟部組織の動き、血液の流れ、炎症の状態、関節内水腫の有無、腫瘍などのリアルタイムな状態を確認できます。

MRI検査

炎症や腱板・筋肉・軟骨・靱帯・関節包など軟部組織の状態を詳細に調べて状態を正確に評価できる検査です。肩関節を安定させるための関節唇などの状態もチェックできます。MRI検査が必要と判断された場合には、連携する高度医療機関をご紹介しています。

治療

薬物治療

痛みを緩和させるための内服薬や外用薬の処方を行います。

安静

強い痛みなどが生じている場合には、安静を保って肩への負担をかけないことが重要です。激しい痛みがある場合には三角筋で腕を吊ることで肩を安定させることも有効です。スポーツ外傷の場合は特に、完全に機能が回復するまでしっかり休養し、調整する期間を設けることが不可欠です。当院では休める必要のある肩はしっかり休めながら、他の部位を調整・強化できる治療やリハビリテーションを積極的に行っています。また、できるだけ休養期間を短くしてより早く復帰できるよう、状態の評価を頻回に行っています。

物理療法

物理的な力を利用して血行を改善し、筋肉の緊張を和らげることで、炎症も改善しやすくなります。表面からでは届かない深部の代謝の活性化が可能であることが、物理療法の強みです。

運動器リハビリテーション

整形外科専門医の運動処方に基づいて理学療法士がメニューをオーダーメイドで組み、丁寧に指導しています。現在の状態に適した肩の運動、ストレッチ、筋力トレーニングによって、筋肉の緊張をほぐし、柔軟性を高め、可動域を回復させます。さらに、正しい位置や動きをしっかりお伝えする指導を行って、再発予防につなげています。
肩だけでなく、周囲の軟部組織や関節、体幹、下半身まで、全身のバランスを見ながら調整し、より早い治癒や再発予防、パフォーマンスアップに役立てています。

リハビリテーション

その痛みは本当に肩だけが原因?

「肩が痛い」と言っても、肩関節部分だけが痛いケースと、首から肩、背中にかけての広い範囲に痛みがあって特に肩が痛いケースでは、疑われる原因や疾患も大きく変わってきます。肩の痛みは、様々な部位が関与していることが多く、内科的な疾患などから生じていることもあります。特に、「肩こり」は、首の問題が大きく関与して生じていることが珍しくありません。悪化を防ぐためにも、できるだけ早期にご相談ください。

肩の痛みでお困りの場合は、
気軽にご相談ください

肩の痛みを起こす疾患はほとんどの場合、痛みが起こってすぐの急性期に受診し、積極的な治療を受けることで悪化を防ぐことができ、高い治療効果を得られ、症状を長く残さずに済みます。違和感がある程度でも速やかに受診することが重要です。
放置してしまうと関節がかたまって強い痛みを起こし、動きが大きく制限され、さらに強い痛みにつながります。悪化させてしまうと長期間治療を続けないと改善できない場合もあります。
当院では、肩に加えて周囲や体幹、下半身など全身もしっかりチェックした上で必要な検査を行って精密に結果を分析し、最適な治療やリハビリテーションにつなげています。治療の選択肢も多くご用意していますので、肩の違和感や痛みでお困りの場合には気軽にご相談ください。