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首の痛み

首の痛みとは

首には、脳につながる太い動脈・静脈、脳と全身を結ぶ神経、飲食物を届ける食道、呼吸の空気の通り道である気管、ホルモンを分泌する甲状腺が集まっており、重要な部位です。多くが交差し、5~6kgもある重い頭を支えて動かすといった機能を果たすために、首の骨は複雑な形状をしています。
頭部と首は、ボーリングの球(頭部)を、重なった骨が支えているような構造になっており、首の骨にほんの少しでも変形が生じると頭の位置が大きくずれてしまい、支えるためにより強い筋力が必要になります。また、頭の位置がずれると重心が大きく変化し、全身のバランスにも大きな影響を与えます。首の痛みやしびれだけでなく、慢性的な頭痛や肩こり、手足の痛みやしびれ、歩行の支障などの問題は、首に原因があって生じている可能性があります。放置していると悪化しやすいので、気になる症状がありましたら早めにご相談ください。

首の骨(頚椎)の構造

背骨の最も上に存在するのが頚椎です。頚椎は7つの骨が積み重なっている形になっています。それぞれの骨の間にはクッションとなる椎間板があります。頚椎の中心には空洞があり、そこには太い脊髄が通っており、左右に8対の頚神経が出ています。

首の骨(頚椎)の役割

頭部を支える

身体を支える背骨のうち、最上部にあって頭の重みを支えているのが首の骨である頚椎です。頚椎の間にはクッションの役割を持った椎間板があり、こうしたメカニズムによって重い頭を支えながら上下左右へスムーズに動かすことが可能になっています。

神経を守る

背骨の中心には脊柱管という空洞があって、脳から伸びた太い脊髄が通っています。頚椎の中を通っている部分は頚髄と呼ばれており、骨の間から神経の枝である神経根が左右に8対出ており、この神経が手足の指先まで伸び手足の感覚を伝え、筋肉などの動きを制御しています。この神経があることで手足を自在に動かし、外部からの刺激を感覚として受け取ることができます。

首に生じる代表的な症状

痛みやしびれ以外にも様々な症状を起こすことがあります。

  • 首の痛み
  • 首のこり
  • 耳鳴り
  • めまい
  • 頭痛
  • ふらつき
  • 歩行障害
  • 腕のしびれ
  • 手に力を入れにくい
  • 文字をうまく書けない
  • ボタンを外すなど細かい指先の作業が
    うまくできない
  • すばやく動けない など

首の疾患のほとんどはゆっくり進行しますが、転倒などの事故で急激に神経が圧迫されてしまい、脊髄損傷などで深刻な手足の麻痺を起こすこともあり、日常生活でも注意が必要です。
また、疲れや気持ちの問題と軽く捉えて悪化するまで症状を自覚できないことも珍しくありません。真っ直ぐ歩くのが難しい、手足がしびれる、手先の作業がうまくできないなどに気付いたら、早めにご相談ください

進行すると首に加え、
頭・肩・背中などに痛みが
広がってしまいます

首を支えて動かす筋肉は頭頂部から肩や背中まで連続性を持っていますので、首の疾患が進行すると痛みの範囲も頭や肩、背中などに広がって、頭痛や肩こり、めまいなどの症状を伴うようになります。
また、高齢になると筋力が衰えることで骨により多くの負担がかかるようになり、骨の変形を促進させてしまいます。早めに適切な治療を受けることで、悪化させずに治せる可能性が高くなります。

代表的な疾患

首や肩のこり

重たい頭部を支えるために、首や周辺の筋肉は大きな負担を受けています。疲労が蓄積してくると休息や睡眠では十分に回復しなくなり、こりから痛みに変化し、さらに進行すると痛みが首だけでなく、肩や背中へと広がっていきます。こりの段階では骨に特別な異常がないケースが大部分を占めますが、放置してしまうと骨にも大きな負担がかかるようになり、骨の変形などを起こすリスクがあります。

頚部痛

首は頭部をやや前方に傾けた状態で支えています。負荷がかかりやすい構造であり、デスクワークやスマートフォン使用などで同じ姿勢を長時間続けると筋肉に大きな負担がかかり、強いダメージを受けるリスクが高くなります。頚部痛を放置していると頚椎椎間板ヘルニアや頚椎椎間板変形、脊柱変形などを起こし、深刻な症状まで進んでしまう可能性があり、できるだけ早く適切な治療を受ける必要があります。

頚椎椎間板ヘルニア

頚椎に生じる代表的な疾患です。骨の間でクッションとして働いている椎間板が過度の負荷を受けることで飛び出してしまっている状態です。椎間板は中心の髄核を線維輪が囲んでいますが、椎間板ヘルニアではこの髄核が線維輪の外側に出てきてしまっています。飛び出した部分が神経を刺激することで、頚部から腕へ強い痛みやしびれを起こすことがあります。

首の骨の変形・変形性頚椎症・頚椎症

首の骨に骨棘(こつきょく)などの変形が起こっています。進行すると、変形や、それに伴う靱帯肥厚、椎間板突出・変化などにより、脊髄や神経根が圧迫されて症状を起こします。痛みやしびれに加え、細かい作業が困難になる巧緻運動障害、歩行障害などの様々な症状が起こり、圧迫を受けている神経の部位により症状や病名、治療法も異なってきます。進行して重度の場合には保存療法では回復が望めず、手術が必要になります。

ストレートネック

自然な弯曲が失われて真っ直ぐになっている状態であり、スマートフォンの長時間使用によって発症しやすいことから「スマホ首」と呼ばれています。デジタルデバイスを長時間使用していると頭を前に下げた姿勢を続けることで首の周囲に大きな負担をかけ、首の骨の変形リスクが高くなり、慢性的な肩こりや首こり、頭痛や頚部痛の原因になります。リモートワークや外出機会の減少による運動不足などの要因もあり、ここ数年、ストレートネックでお悩みの方が増えています。悪化させないために、違和感程度でも気軽にご相談ください。

首さがり病

首周辺の筋肉が急激に衰えることで頭が前方に傾いた状態になってしまう疾患です。首周辺の筋肉が過度の緊張を強いられて、こりや痛みを生じ、重心が崩れて歩行が困難になり、食道や気管が圧迫されて呼吸や嚥下(飲み込み)に障害を起こすこともあります。当院では、整形外科専門医による診断と運動処方箋に基づき、理学療法士が最適なメニューを組んでストレッチやトレーニングを行って頭を支える筋肉を向上させ、姿勢や動作に生じた制約の改善に導いています。なお、必要がある場合には、首を支えるカラーなどの装具療法も行います。

むち打ち症(外傷性頚部症候群)、頚椎捻挫

急激に生じた激しい衝撃によって首の筋肉が障害を受けている状態です。交通事故で生じる代表的な怪我であり、損傷の程度や治療開始時期により個人差はありますが、回復まで長期間かかることが多くなっています。頚部から肩のこりや張り、違和感程度のこともありますが、日を追って悪化するケースが多く、しびれや麻痺、めまい、耳鳴り、吐き気などを生じることもあります。
当日は「大丈夫」と感じても整形外科を早めに受診し、しっかり検査を受けて早期に適切な治療をスタートさせることで、つらい症状まで進ませずに治せる可能性が高くなります。深刻な合併症の発症リスクを減らすためにも、早めにご相談ください。

首の神経が圧迫されると
深刻な症状につがなる
リスクがあります

頚椎には脳につながる頚髄が通っており、この神経が圧迫を受けると歩行障害、麻痺、筋力低下など、日常生活に大きな支障を及ぼす症状を起こす可能性があります。首の痛みや違和感があったら早めに整形外科を受診してしっかり検査を受けるようお勧めしています。

診断

頚痛は重い頭部を支えて動かし、脳と全身をつなぐ神経が通っており、周囲には太い動脈や静脈、気管や食道が存在しているため、複雑な構造をしています。必要な治療方針や最適なアプローチが変わることもありますので、神経が圧迫されている部分を特定するためには、精密な検査と経験豊富な整形外科専門医の診断が不可欠です。

X線検査

頚椎の形状の異常や変形、神経が通るスペースの異常、不安定性などの有無や程度を詳細に確認します。正面、横、斜めなど、角度を変えて撮影した画像を確認し、精緻にチェックします。

MRI検査

X線検査ではうつらない筋肉・靱帯、椎間板といった軟部組織の状態、血液の流れ、神経の圧迫の有無や程度などを詳細に確認し、分析します。椎間板の突出によるヘルニアや神経の通る脊柱管の狭窄などの状態を正確に把握して評価できます。MRI検査が必要と判断された場合には、連携している高度医療機関をご紹介し、検査を受けていただいています。

治療

薬物治療

痛みを緩和し、筋肉の過度な緊張をゆるめる薬を処方し、つらい症状を軽減させます。痛み止めだけでなく、神経症状に高い効果を見込める薬など、患者様の状態やライフスタイルにきめ細かく合わせた薬を処方しています。

運動器リハビリテーション

頚椎やその周辺を支えている筋肉を鍛えることは、機能改善や症状緩和に不可欠です。当院では、医師の運動処方に基づいて理学療法士が最適なメニューをオーダーメイドで作成し、ストレッチや効果的なトレーニングの指導を行っています。首周辺の筋力に加え、肩甲骨や肩関節周辺の筋力を向上させ、柔軟性や可動性を改善して身体機能向上を目指します。

物理療法

物理的なエネルギーを使った治療法で、熱・水力・電気・音波・圧力などを利用した治療があります。物理療法で血液やリンパ液の循環や患部の代謝を改善させることで、痛みを緩和します。運動療法や機能訓練と組み合わせて行うと、より高い治療効果が期待できます。

姿勢指導

日常の動作の癖や姿勢の乱れは、整形外科的疾患の発症のリスク要因です。無意識に行っている立つ・座る・歩くといった動作を見直し、改善することは、身体への負担を減らして様々なリスクの低減に役立ちます。

装具治療

治療用に設計された装具を作成し、装着して固定することで痛みを軽減します。また、骨の形状異常などがある場合には、部位への負担を軽減させる形状を保てるよう矯正する目的で装具治療を行うこともあります。医師や理学療法士の指示に従って装着してください。

手術治療

激しい痛みがある場合や、重篤な神経症状がある場合には神経の圧迫を解消するための手術を検討します。手術自体はご紹介した連携高度医療機関で受けていただきますが、術後の診療やリハビリテーションは当院で受けられます。当院では、患者様の状態やご希望にきめ細かく合わせたメニューを作成し、理学療法士が丁寧にサポートするリハビリテーションを行っています。

当院では専門性が高く安心できる
リハビリテーションを
提供しています

当院では、最適なリハビリテーションメニューをオーダーメイドで作成しており、一人ひとりの状態やライフスタイルなどにきめ細かく合わせたサポートを行っています。首は複雑な構造を持っており、全身へ大きな影響を与えてしまう部位ですので、専門性の高い治療やリハビリテーションが不可欠です。当院では整形外科専門医の運動処方箋に基づき、理学療法士が患者様に合わせた効果的なケアを行い、全身バランスも視野に入れた治療やリハビリテーションを提供しています。回復のペースには個人差がありますので、現在の状態を見極めた上で無理なく安心して行うことができ、最も高い効果が得られるようにしています。

「こり」と「痛み」の違い

肩こりは健康上の問題がない多くの方も悩まれているポピュラーな症状です。姿勢の悪さ、同じ姿勢を長時間続けることで生じやすく、日常的な症状であるだけに整形外科を受診するタイミングを失って悪化させてしまうケースが少なくありません。肩こりの場合、一時的な症状があっても、休息や睡眠、ストレッチやマッサージで緩和が可能です。受診が必要なのは、慢性的な痛みになっている場合や、手足のしびれ・頭痛・耳鳴りなど他の症状を伴う場合です。こうした症状は、首などに早期の治療が必要な問題が隠れている可能性がありますので、早めにご相談ください。

リハビリテーション

首の痛みでお困りの場合は、
気軽にご相談ください

首は頭を支え、脳と全身をつなぐ神経が通る場所であり、複雑な形状をした頚椎はちょっとした問題であっても深刻な症状につながりやすく、脊髄損傷をはじめ日常生活に大きな支障を及ぼす可能性もあります。軽い違和感であっても、できるだけ早めに整形外科の受診をお勧めしています。
現在は、若い方にもストレートネック(スマホ首)などの発症が増えています。放置して深刻な状態にさせないためにも、慢性的なこりや痛みを感じたら気軽に受診してください。当院では、精度の高い検査や診断、適切な治療を行っています。また、特に問題がなかった場合も、悪化させないための対策などをお伝えし、快適に暮らせるようサポートしていますので、安心してご相談ください。